残業を重ねても売上が伸びない。努力しているのに昇進が見えてこない。資格取得に投資したのに転職が決まらない。
こんなとき、多くの人は「結果さえ手に入れば行動も気持ちも変わるのに」と考えがちです。しかし実際は真逆で、結果(Have)を入口にしてしまうと行動(Do)は続かず、あり方(Be)は育ちません。
この順序を手際良くひっくり返すフレームワークがBe‑Do‑Have理論です。コーチング界隈では「Be‑Do‑Haveとは人生を逆算するナビ」とも呼ばれ、自己変革の王道メソッドとして浸透しています。本記事ではBe‑Do‑Haveの意味を噛み砕き、今日から意識して日常に落とし込めるように解説していきます。

【この記事を書いた人】
Bellさん
専門ジャンル:営業、人材育成
高校球児に学ぶ「Be-Do-Have」とは?
“甲子園出場チームの自分たち” から逆算する
仮にあなたが高校球児だとして、「今年こそ甲子園に出たい!」と決意した瞬間を想像してみてください。多くのチームはまずGOAL(手にしたいHave)=甲子園出場という結果を掲げます。そうすると、そのGOALを基準とした在り方(Be)が生まれます。
- Be(在り方):自分たちはすでに “甲子園に出るチーム” である
- Do(行動):だから「朝6時の自主練もやる」「声出しも全力でやる」「食事管理も徹底する」
- Have(成果):公式戦で勝ち続け、甲子園への切符を手に入れる
もし練習態度がゆるんだら、キャプテンはチームメンバーに対してこう声を掛けるでしょう。
「甲子園に出るチームが、こんなレベルの練習をしているだろうか?」
在り方を基準に行動を点検するから、目先の疲れや誘惑に流されなくなります。このアプローチは、コーチングにおいても同様です。Be→Do→Haveの順で設計すれば、宿題がなくてもクライアントは自発的に動き、途中でつまずいても先ほどの「甲子園チームならどうする?」と同じ思考で、自分自身で軌道修正ができます。
コーチングでBe-Do-Haveを意識すると強い3つの理由
1)無理せずに行動が自走する
まず手にしたいHave(ゴール)=「来年のフルマラソンで完走する」と決めたとします。そうすることでBe(在り方)=「自分はすでにフルマラソンランナーだ」という在り方を手にすると、行動が自動的に起動します。ランナーなら当然やること「朝起きてランニングシューズを履く」「水を飲んでストレッチをする」などのDo(行動)が、誰かに命令されなくても「当たり前」にやれるようになります。結果として1日5kmのジョグが習慣化し、3ヶ月後には30km走をこなせる脚力(Haveへ向かう途中の成果)が自然に得られます。ゴール→ランナーの在り方→行動の順にリンクさせることで、本人の意志力に頼らず走り続けられるわけです。
2)コーチとクライアントの依存関係が消える
コーチがタスクを与えるのではなく、在り方を共創するとクライアント自身が行動を設計し始めます。コーチは先生ではなく鏡になります。
3)成果の質が深く刻まれる
最終的に手にする結果だけでなく、「私はやればできるんだ」という自信やセルフイメージが手に入り、次の挑戦にも弾みがつきます。
では、ここからBe-Do-Haveの具体的な解説と、どのように活用するかを具体的に解説していきます。
理論の骨格──Be‑Do‑Haveを正しい順に並べる
Be‑Do‑Haveの基本構造とは?
まず、Be‑Do‑Haveを図で表すと以下の形になります。

■Be(あり方)
自分が「こう在りたい」と願うアイデンティティや価値観を示す言葉です。「私は信頼されるリーダーである」「私は顧客の成功を第一に考える営業である」のように、「私は」から始まる現在形で表現することが重要です。
■Do(行動)
Beを体現する具体的なアクションです。「傾聴ミーティングを週1回設定します」「提案書を出す前に必ずテスト通話を挟みます」のように、習慣化できる単位で設計するのがコツです。
■Have(成果)
行動の副産物として手に入る実績・評価・状態を指します。例えば「昇進」「NPS向上」「体脂肪率減少」などです。
コーチングでBe-Do-Haveを活用するには?
コーチングの現場でBe‑Do‑Haveを語る際、「カウンセリング」「コーチング」「コンサルティング」「ティーチング」の違いについて質問を受けることがあります。関係性を簡潔に整理すると次のとおりです。

自分自身のBeと向き合うとき、大きく分けて「自己否定」「自己肯定」「自己効力」の3つの状態に分類されます。これらを正しく把握することで、最適な手段で自分と向き合ったり、他者の力を借りるという選択が可能になるでしょう。
以下の4つの手段は、主にコーチ側がクライアントに関わる際に必要な観点となります。
- カウンセリング:自己否定の状態に対し、傾聴と共感で自己肯定へと導きます。
- コーチング:自己肯定の状態に対し、「もっとできる」という自己効力感を引き出すために介入します。
- コンサルティング:Doに対して提案や指導を行い、行動変革を促します。
- ティーチング:理解や納得が必要な場面で知識やスキルを教示します。
どの手段が正しいかではなく、状況に応じて使い分けることが重要です。
なぜBe-Do-Haveの順序が命なのか?
大きく分けると以下の3つのパターンに並べ替えられます。

それでは順序が大切な理由を確認していきましょう。
動機付けが外的条件に縛られる
②のように「○○が手に入ったら△△します」という構文は、手に入らなければ何もしないと宣言しているのと同じです。コンサルの現場でも「予算が付けば学習プログラムを走らせる」と言って数年間止まってしまう案件を頻繁に見かけます。
達成しても空虚感が残る
②Have→Do→Beの順で目標に到達すると、「次の成果を取らないと自分には存在価値がない」と感じてしまい、燃え尽き症候群のリスクが高まります。
学習サイクルが回らない
②や③のように行動と成果だけを往復すると、判断軸のズレを検証しづらく、改善スピードが落ちてしまいます。
GPSで例えるなら、Beは目的地、Doはルート、Haveは到着証明です。目的地を入力せずにナビを起動しても「ルート未設定」のまま車が動かないのと同じ原理ですね。
ロバート・キヨサキ著『金持ち父さん』から学ぶ
『金持ち父さん貧乏父さん』でもBe‑Do‑Haveの順序が強調されています。「投資家(Be)として考え、学び、行動(Do)すれば、資産収入(Have)は後からついてくる」というメッセージです。
多くの読者は「資産が増えたら投資家になれる」と解釈しがちですが、著者が語るのはその逆です。投資家として在ることが先で、資本はあとから集まります。この発想はビジネスにもそのまま適用できるでしょう。
実際にBe-Do-Haveを設計してみよう!
自分のBeを設定する3ステップ
理論や構造を理解しただけでは終わりません。ここからは「自分のBeをどう考えるか」という問いに取り組みましょう。
1. 肩書きブレイク
今の役職や職種をいったん外し、抽象度を上げた呼称を考えます。営業課長なら「顧客価値の翻訳家」といった具合です。
2. 価値観トップ3を可視化
付箋にキーワードを書き出し、優先順位をつけます。迷ったら「1年でひとつしか守れないとしたらどれか」を基準に選びます。
【キーワード例】
- 人との関係性:信頼、共感、協力、貢献、調和、尊敬、友情、愛情、支援、育成
- 仕事や活動:達成、成長、挑戦、創造、革新、効率、成果、専門性、貢献、影響
- 状態や感覚:自由、安定、安心、幸福、平和、健康、喜び、充実、満足、学び、探求、柔軟性
- 感情:ワクワク、感動、感謝、充実感、達成感、安堵、穏やかさ、高揚
- 行動:誰かの役に立つ、新しいことに挑戦する、問題を解決する、目標を達成する、美しいものに触れる
- 倫理観や原則:誠実さ、公平性、正直さ、責任感、公正さ、思いやり、品格
- 生き方や働き方:自律性、独自性、シンプルさ、多様性、バランス、持続可能性
3. 1行ステートメントに統合
「私は◯◯を通じて△△を実現する人である」の形で宣言文を作り、毎日声に出して読み上げます。瞑想やジャーナリングでやっても同じ効果が期待できます。
Doを高効率に設計するコツ
Beが決まれば手段は無数に考えられます。以下に具体例を挙げていきます。
レバレッジ行動をひとつに絞る
「信頼されるリーダー」がBeなら、「1on1の仕組み化」がレバーになります。
環境に埋め込む
人は意思より環境に従います。朝ランを習慣化するなら寝る前にウェアとボトルを玄関へ置き、スマートフォンはリビングで充電します。
最短フィードバック回路を作る
行動後に即座にデータを取ります。1on1終了直後に3問アンケートを送ったり、NPSを週次で可視化したりします。
Have を計測し「次の Be」を磨く
Be‑Do‑Haveのゴールは成果を出すことではなく、ある成果を材料にして次の自己定義をアップデートすることです。マラソン完走(Have)から「継続力のある人だ」という新しいBeへと進化すれば、行動レパートリーはさらに広がるはずです。
植物栽培で考えるとイメージしやすいですが、Haveは実が成った状態です。収穫したら種を取り出し、次の畑に蒔きます。Be‑Do‑Haveは一度きりの収穫ではなく、循環型の農業モデルと同じです。
ビジネス現場への応用例とデータ
理論を理解したら、次は実践です。Be-Do-Have理論は、ビジネスの様々な場面で具体的な成果を生み出すことができます。ご紹介する例はあくまで一例であり、皆さんの置かれた環境や状況に合わせて、Be-Do-Haveの具体的な設計は無限に広がります。 これから、その応用例をいくつかご紹介しましょう。
マネジメント
- Be:チームの才能を開花させる園丁です。
- Do:目標設定をOKRから個人ビジョン逆算型へ変更し、対話の質で評価します。
- Have:半年で離職率が15%から5%へ改善し、売上が前年同期比で18%増加しました。
営業
- Be:顧客の未来を設計するファシリテーターです。
- Do:提案書を「機能→効果」型から「ありたい姿→ギャップ」型に変換します。
- Have:平均CPO(Cost Per Order)が25万円から18万円へ低下しました。
コーチング
- Be:伴走者ではなく鏡です。
- Do:質問前に必ず「相手のBe仮説」を手帳にメモします。
- Have:クライアント目標達成率が68%から83%に向上しました。
まとめ
Be‑Do‑Have理論は、「在り方→行動→成果」の流れを設計図にすることで、意思決定の迷いを減らし成果を再現可能にします。まずはメモ帳に1行、「私は〇〇な人である」と書き留め、その在り方を示す行動を今日のタスクにひとつだけ組み込んでみてはいかがでしょうか?
シンプルな実験を積み重ねれば積み重ねるほど、成果は自然に後を追ってきますよ。


