コーチングによる部下育成の極意|主体性を引き出す質問技術

コーチングによる部下育成の極意|主体性を引き出す質問技術

あなたは部下の「可能性」をどれだけ信じていますか? 

忙しさの中で、ついつい「答えを教える」コミュニケーションになっていませんか? 

本記事では、問いかけによって部下の力を引き出し、自ら考えて行動する人財を育てるコーチングの本質と実践方法を紹介します。 この記事を読めば、明日から部下とのコミュニケーションで試せるコーチングを学ぶことができるので、ぜひ最後までご覧ください。

【この記事を書いた人】
水上 大輔 
専門ジャンル:人事労務・会計財務

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部下の可能性を引き出す「コーチング」とは?

コーチングについて知っていても、その本質や実践方法を十分に理解できていない方も多いのではないでしょうか。 

本章では、部下育成におけるコーチングについて、以下の内容を解説します。

  • 教えるだけにとどまらない、新しい部下育成の形
  • コーチングとティーチングの違いと使い分け
  • 成功事例:コーチングで変わったチームの実績

これらの内容を理解することで、コーチングの全体像を把握し明日からの部下育成に活かすことができます。 

それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。

教えるだけではない新しい部下育成の形

昨今、ビジネス環境の急速な変化に伴って部下育成のアプローチも変化しており、コーチングが新しい時代に適した手法として注目されています。

コーチングとは?
対話を通して相手の潜在能力を引き出してパフォーマンスを最大化するプロセス

以下の3つの背景により、従来の「教える」から「引き出す」育成へ転換されつつあります。

背景 詳細
VUCA時代 指示待ちではなく自ら考え行動できる人材が必要
新世代の価値観 若手社員は自律性と成長機会を重視する傾向
専門性の高度化 専門性が高まり上司が全てを教えることが困難

コーチングによって部下は自律的に考え行動する力を身につけ、組織全体の変化対応力も高めることができるでしょう。 

あなた自身のコミュニケーションスタイルを振り返ってみてください。

コーチングとティーチングの違いと使い分け

部下育成に課題を感じている方が多いのは、コーチングとティーチングの適切な使い分けができていないことが原因のひとつと言えます。 

以下に、主な違いをまとめました。

比較項目コーチング ティーチング
コミュニケーション方向 双方向 一方向
知識の所在 「答えは相手の中にある」 「答えは指導者が持っている」
目的 自発的な気づきと行動力の向上 知識・技術の習得と定着
適した場面 一定の経験やスキルを有してい段階 基礎知識や技術が不足している段階

コーチングとティーチングに優劣はなく、部下の成長段階や状況に合わせて使い分けることが重要です。 

コーチングの成果と組織への影響 

コーチングを取り入れた企業では、さまざまなポジティブな効果が期待できます。 特に効果が出やすいのは、以下の3つの領域です。

領域一般的な効果
生産性 チームの業務効率や成果が向上
定着率 社員の離職防止とエンゲージメント向上
イノベーション 新たなアイデアや提案の増加

コーチング導入でメンバーの主体性が高まり、問題解決力が向上してチーム全体の活性化につながります。

明日から実践できる! コーチングの3つの基本技術

コーチングの効果を知っていても、具体的にどのようなスキルが必要なのか、どう実践すれば良いのか分からない方も多いでしょう。 

本章では、明日から実践できるコーチングの基本技術について、以下の3つの要素を紹介します。 

  • 【傾聴】部下の話を最後まで聴き切る技術
  • 【質問】考えを引き出す質問の具体例
  • 【承認】やる気を高める効果的な言葉かけ 

これらの技術を身につけることで、部下との対話の質が変わり、自発的に考え行動する人材の育成につながります。 

それぞれの技術について、詳しく見ていきましょう。

【傾聴】部下の話を最後まで聴き切る技術

上司からの「傾聴」を実感している社員は、そうでない社員と比較して組織への帰属意識が高い傾向にあります。 積極的に相手の話を理解しようとする姿勢が、上司への信頼感や安心感を高めるからです。 効果的な傾聴には、以下の4つのポイントがあります。

ポイント実践方法効果
全身で聴くアイコンタクト・前傾姿勢・腕組みをしない聴く準備ができている状態を示す
相づちと確認「そうだったんですね」などの反応 理解しようとしている安心感を与える
言葉の反復「つまり〇〇ということですね」と要約誤解防止と思考整理の手助けになる
沈黙の許容考える時間を与えて急かさない 深い思考と本音を引き出す

傾聴は時間がかかるように思えますが、長期的には部下の成長と問題解決能力を高めるのに効果的です。 

部下との会話では、言葉の奥にある思いや価値観まで聴こうと意識してみてください。

【質問】思考を広げる効果的な問いかけ技術

優れたリーダーは指示よりも質問を多く用い、部下の視野を広げて考えを掘り下げ、行動を促す目的で質問を使い分けています。 

コーチングにおける効果的な質問例を、以下のとおりまとめました。

目的 質問例効果
視野を広げる 「他にどんな選択肢が考えられますか?」 固定観念からの解放
創造的な発想を促す
掘り下げる 「その判断の根拠は何ですか?」 本質的な理解
意思決定の質を向上
行動を促す 「次のステップで何ができそうですか?」 具体的なコミットメント
実行力の向上

クローズドクエスチョンよりオープンクエスチョンの方が、思考を広げて深める効果があります。 

「なぜ?」ではなく「どのように?」といった問いかけを意識することで、対話の質が高まるでしょう。 

【承認】モチベーションを高める、認める技術

承認は部下のモチベーションを高め、パフォーマンスを向上させる手法です。 

定期的に承認を受けている従業員はそうでない従業員と比較して離職率が低く、生産性が高い傾向があります。 

以下に、承認の3つのレベルと効果的な言葉かけの例をまとめました。

承認レベル具体例効果
存在の承認「おはよう」
「体調はどう?」
存在を認めているという安心感を与える
プロセスの承認「何度も修正して粘り強く取り組んだね」努力や工夫を認めることで内発的動機づけを高める
強みの承認 「あなたの分析力はチームの大きな強みだ」 個人の特性や強みを認めることで自己効力感を高める

効果的な承認は一般的な褒め言葉ではなく、個々に対して具体性のある認め方が重要です。 

意識的に「認める」言葉を増やしてみると、部下とのコミュニケーションに変化が生まれるでしょう。 

部下との対話で実践するコーチングステップ

コーチングの基本技術を理解しても、実際の部下育成の場面でどう活用すれば良いのか迷うことも多いでしょう。 

本章では、部下との対話で活用できるコーチングの実践例と、忙しい日常業務の中でも取り入れられる方法について、以下の内容を解説します。 

  • ミスが多い部下との対話シナリオ 
  • 消極的な部下のやる気を引き出す会話 
  • あなたもできる! 1分間コーチングの始め方

これらの実践例を参考に、ご自身の部下との対話に取り入れることでコーチングの効果を実感できるでしょう。 

それぞれの例について、詳しく見ていきましょう。

ミスが多い部下との対話シナリオ

ミスは叱るのではなく成長の機会として捉え直すことで、部下の問題解決能力と責任感を高められます。 

叱責中心の対応は再発防止効果が低く、コーチング的アプローチのほうが長期的な成長につながることが多いためです。 

以下で、具体的な対話例を紹介します。

従来の対応 コーチング対応 効果
「またミスしたの?」 「どんな点が難しかった?」 防衛反応ではなく本音で状況を話せる環境を作る
「次からは注意して」 「どうすれば改善できる?」 自分で解決策を考える
機会を提供する

コーチング対応により、部下は「叱られた」という感情ではなく「自分で解決策を見つけた」という成功体験を得られるでしょう。

消極的な部下のやる気を引き出す会話 

消極的な部下には、声を引き出して強みを活かす場を作るコーチングが効果的でしょう。「消極的」と見える部下の多くは、「意見を言っても変わらない」と感じている場合が多いです。

以下で、具体的な対話例を紹介します。 

従来の対応コーチング対応効果
「積極的に意見を言って」 「特に興味を持った部分は?」 関心領域を探る
入り口になる
「みんなの前で発言して」 「どんな点に興味を持ったの?」 話しやすい雰囲気で深い対話を促す

コーチングでは部下の行動を変えるのではなく、本来持つ能力や関心を引き出して活かせる環境を整えることが大切です。 

部下の方の隠れた強みを見つけ出し、活躍の場を意識的に作ってみましょう。

あなたもできる! 1分間コーチングの始め方

忙しくてコーチングの時間が取れない方でも、短時間で質の高いコーチングを実践できる「1分間コーチング」を紹介します。 以下で、具体的な3ステップを見てみましょう。

ステップ内容質問例
状況確認(20秒) 現状把握 「進み具合はどう?」
課題掘り下げ(20秒) 課題明確化 「難しいと感じる点は?」
次のアクション(20秒) 行動計画 「次のステップは?」

短い対話でも、各ステップを意識することで効果的なコーチングが可能です。 

廊下ですれ違ったときや休憩時間などのちょっとした時間でも、日常の中にあるコーチングの機会を意識して実際に活用してみましょう。 

【まとめ】コーチングによる部下育成を明日から実践しよう

コーチングは特別なスキルではなく、部下の可能性を信じて引き出す対話の姿勢です。

本記事で紹介した「傾聴」「質問」「承認」の基本スキルを、明日からのコミュニケーションに早速取り入れてみましょう。 

最初は「答えを与えたい欲」との戦いかもしれませんが、一瞬の我慢と「どう思う?」という一言が部下の可能性を開花させるきっかけになります。 

短い時間でも、まずは「聴く」ことから始めてみると良いでしょう。 次第に他の技術も試しながら、部下の成長を見守る上司の醍醐味を味わってください。



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この記事を書いた人

水上大輔

大手自動車部品メーカーで経理から人事へとキャリアを重ね、様々な世代の部下育成に携わってきました。若手からベテランまで各々の強みを活かす対話を心がけており、最初は消極的だった社員が少しずつ変わっていく過程にやりがいを感じます。現在は会社の評価制度や研修にコーチングの要素を取り入れことを考案中です。難しく考えず、日常会話の中でも部下の可能性を引き出せる環境づくりを進めています。